高周波炉の実験(2)
パワー・エレクロトニクスを担う素子の一つ、IGBT(絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ)のやや大きいものを用いて、電磁波から熱への変換を行なうことにする。
1. IGBT ゲート駆動回路の作成:
(1) 単独型 ゲート駆動回路:
単独の IGBT を用いた誘導加熱のための、比較的高速(20k〜33kHz)で動作するゲート駆動回路を組む。 IGBTの動特性の欄(td(on)、tr、td(off)、tf)の条件に、VGE=±15V とあるので、IGBTのコレクタとゲートの間にある容量 CCG に起因する、ターン・オフ時の VGEcg による誤点弧を防ぐため、かなりマイナス側に引っ張る必要がある。 この回路では、VGE が ONのとき+17V(ゲートに入れると+15V前後になる)、OFFのとき−15V になるように、15VレギュレーターOutを IGBT のE(エミッタ)電位とするようにした。
(今回、トランスの性能により +17V、−15Vとなったが、本来は +15Vと
−15Vのレギュレーターを用いて、0−15V−30V の電源を作る。)
PWMコントローラー TL494(他に μPC494など)は、Vcc〜40V、max200kHzのハーフブリッジ用の2出力・RC発振器で、555と違って、デューティー比(3pin、0−49%)、デッドタイム(4pin、5%)に対して独立に 周波数をコントロールすることができる。 出力は OC(アウトプット・コントロール、13pin) を+5Vにして プッシュ・プル モードに固定。(13pinをアースすると シングル・モード) エラー・アンプは +側(1、16pin)をアース、−側(2、15pin)を+5Vにして、0入力に固定した。
たとえば 図のように、2.2kΩ + 1kΩVR: 0.01μF の場合、
f (kHz) = 1.2/(C(μF)・R(kΩ))・(1/2) = 18.8 〜 27.3(kHz) となる。(20kHzをカバーする)
発振コンデンサー CT=0.01μF にはポリプロピレン・フィルムコンの G級品(±2%)を用いた。
モーター駆動に使われるフルブリッジ・ドライバ BD6231F は、Vcc=+36V まで使える(〜100kHz、max2A、Vin=〜Vcc)ので、0Vから32Vまで振ることができる。
PWM機能を使わず、H(正転)、L(反転) の出力機能だけを用いる。 図の真理表より、TL494からの出力を
シンク・モード(反転モード)とすると、BD6231からの出力はソース・モード(正モード)になる。
波形をオシロで見た感じでは、少なくとも20k〜30kHz程度できれいな方形波であり、しっかり追随していて問題ないと思われる。
(cf. デュアル・ローサイド・ドライバのIR4427等では耐圧が足りず(max20V)、マイナスに引けない。)
(2) ハーフブリッジ型ゲート駆動回路:
ハーフブリッジ型 IGBTモジュール を駆動するために、ハイサイド・ローサイド ドライバを用いて 回路を構成する。 ハーフブリッジ型なので、上下両方が同時に通電する暴走事故を防ぐために、デッドタイムは必須となり(TL494により最大デューティー比で約5%確保)、ターン・オフ時の
CCG → VGEcg による誤点弧を防ぐために、VGE を ±15V、あるいは、+15V、−8Vなどにかなり引っ張る必要がある。
しかし、高圧側のハイサイドは、高速で変動する高電圧の基準電圧 GND2 (あるいは Vsなどと表記)に対して 出力(OutAH、OutAL)が常に ±15Vになっていなければならないので、外部から電圧を負のほうに引っ張るには それなりの構造の駆動素子と、複数の電源トランスが必要となる。(−5〜−15VのVEE 電源配線が必要)
(歴史的に、前段からのコイル入力だったゆえに、電気的に絶縁されて自動的にマイナスになり、±の表記になっている。 今でも大型のものはコイル入力。)
ここでは、比較的手に入りやすい、ミラー・クランプ機能を持った BM60212FV−C (ローム、マルツ; 〜1200V、Vcc〜24V、max5A、SSOP20pin)を用いた。 Lの時に、VGE を マイナスに持っていくのではなく、RG の後につながっている ミラークランプ端子(MCA、MCB)から強制的に0V(=GND2)に引くことにより、 VGEcg を下げて誤点弧を防ぐ。 ローサイドのほうも同様。 これによって、駆動電源のトランスは1個で済む。
プリント基板は、高電圧のハイサイド側と絶縁するため、間をエッチングして間隔を空ける。 また、IC を取り付ける SSOP
20p 変換基板の中央部も削り落としておく。
* VGEcg を防ぐもう一つの方法は、CCG を打ち消すために GE間に、Cies (規格表に記載、ex)6150pFなど)の2倍の容量のコンデンサー
CGE を入れる。 ただしこのコンデンサーを入れた後は RG を半分にする必要がある。 RG 内蔵型(RGintの表示)の IGBTでは この方法は使えない。
2. ハーフブリッジIGBT の電流共振回路の実験:
誘導加熱の方式には、電圧共振(単独のIGBT) と 電流共振(ハーフブリッジ、フルブリッジIGBT) の2種類がある。 電圧共振回路は、Lが十分大きい(渦巻き型コイル)場合、1kVもの高電圧になるので、IGBT、コンデンサーなどすべて高電圧の耐圧が必要。
100AC入力の小型の IH調理器によく用いられる。 しかし、この高周波炉のようなハイC・ローLの誘導加熱回路では、電流は共振点で最小で、わずか数kHzずれるだけで大電流が流れ
暴走の危険があり、調整が困難である。またインピーダンスのミスマッチにより加熱が不十分である。 (FETと違って、IGBTは100V、220Vなどの高電圧で用いる。 IH
調理器のC=.33μF、f =20k〜50kHzとして L=30〜200μH
程度。 一方、高周波炉のLは、φ30、5〜8Turn程度で、1.1〜1.3μH。)
そこで、共振周波数の調整が容易な 電流共振回路で実験することにした。 この場合、コンデンサーが間に入っているので、共振点で電流が最大でそれから外れると電流は下がるので、周波数の調整がしやすく、電圧も高くならない。
IGBT モジュールは、 BSM200GB60DLC (Infineon、アリエク; 200A、600V、推奨最大周波数約20kHz、Cies=9000pF、 (200A、300V、VGE=±15V、RG=1.5Ωの時) tdon=163nS、tr=43nS、tdoff=253nS、tf=33nS)を用い、 1.(2)の ハーフブリッジ型のゲート駆動回路を RGon=1.5Ω(2W)、RGoff=1.5Ω(2W) を介して、ハイサイド、ローサイドのそれぞれのゲート(4、6pin)につなげた。 ゲートへの配線はねじって誘導電流を防ぎ、各ゲート−エミッタ間は 1kΩ(1/2W)でつなげて電荷が溜まるのを防ぐ。
TL494の発振周波数は、RT = 1kΩ+2kΩVR、 CT = 0.01μF で、 19.2 〜 46.5 kHz。
まず、C=6μF、L=1.2μHの直列共振回路について、32.のDSS周波数特性測定器を用いて周波数特性を測定すると、約60kHz共振周波数の下は 1/3、1/5・・・の周波数のみが測定され(1/2、1/4、・・は出てこない)、60kHzの共振回路をその1/3の周波数=約20kHzで駆動することになる。 このLC共振回路のコンデンサーの方にハーフブリッジの中点(=出力)をつなぎ、24V電源・20kHz前後で動作テストをした。 結果は、TL494の周波数VRを回して共振周波数への同調はよくできたが、やはりハイC・ローLのミスマッチのため、コイルに挿入したプライヤ等は温まるが赤熱まではいかなかった。
3. マッチング・トランスの挿入:
(1) 24Vスイッチング電源によるコア材の検討:
Mn−Znフェライトコア(変圧器、EMIフィルタ用、49×32×19mm ×3個、アリエク・中国製)の他に、 フェライト・トロイダルコア・FT240−77(無線用、0.01〜1MHz、μs=2000、61×36×13mm ×3個、アミドン)、 アモルファス・トロイダルコア(溶接機用、60×35×25 ×1個、アリエク・中国製) の3つを試した。
FT240−77は、μは大きいがBsはそこそこで、Mn−Znフェライトコアよりももう少し高周波向きの用途(表面焼き入れ用など、200−300kHz)に向いていると思われる。
アモルファスコアは、巻き数20ターンにしても100μHしかなく、1次側のコンデンサーを0.66μFにすると27kHzあたりで猛烈に共振し、コアだけ熱くなって2次コイルには全く伝わらないという現象が起こった。
一方、Mn−Znフェライトコアは安価であり、μと同時にBsも大きく、周波数も約50kHzまでは損失が少ないので、高パワーが期待できる。 1次コンデンサー
C1を約7μF(630V1μF ×7)、電力供給用コンデンサー Cmを10μF(250V22μF×2・直列)にして18−40kHzの間で1次回路の共振点は無く、40kHzあたりで伝達出力が最大になった。 1次コンデンサーC1を大きくして1次共振を避けることができ、エネルギーを2次側へ伝達する2次共振点は確保している。
2次共振コンデンサー Cr は、当初 6μF・500VAC・60A・〜50kHzの電力用コンデンサーを用いたが、共振周波数40+αkHzよりも少しでも下げたいので(IGBTの最適周波数は20kHzまでと低い)、0.33μF×8 =2.64μFのMKPコン(0.33μF、630V、〜50kHz)を追加した。それでも41.3kHzでmaxとかなり高めだった。
因みに、2.のような、周波数特性測定器によるコア材を入れた共振周波数の測定は、測定電流が微小なため、全く違った結果となり、参考にならなかった。
結果は、Mn−Znフェライトコアで、24Vスイッチング電源を使用して、
40kHz、デューティー比40%(最大)で、 3個つなげて 2Turn(114μH): 何も入れないで 0.6A → プライヤを入れて 2A(即発熱) となり、
IGBTはわずかに温まり、コアは冷たい状態だった。
(2) 100VAC全波整流電源:
次のステップは、電源は商用電流(AC100V)を、ヒューズ(15A)を通してそのまま用い、(熱にするだけなので、)平滑なしの全波整流で供給した。 共振回路の銅パイプ(φ6mm)には水を流した。 安全のために、まずゲート電源を先に入れ、それからメイン電源を入れる。 共振器と 高周波電源の結合は、20Aのワニぐちクリップで行なった。
トランス部は、コイル配置の都合で、また熱放散を良くするため、2つに分け、2個つなげた2組のコア(計4個)とし、 コイルの巻き数はそれぞれ 3Turn(巻き線方向同じ、接続逆)、入力41kHz とした。
デューティー比を最大の40%に上げたときの、整流後の電流値は、
何も入れない(アイドリング状態): 2A(88V) → 6角レンチ: 4〜5A(すぐ赤熱)、 プライヤ: 7〜10A (84V、赤熱)、 ただし 黒鉛るつぼ(φ30)は 3.5A
10Aのとき、コアはわずかに温まる程度で、まだ余裕がある。しかし巻き線の2.0mm2線(max27Aのはず)の方が熱くなり、コアに伝熱する。クリップも熱くなる。
IGBTは40kHzのせいで、ファンを回した状態でかなり温まった。(推奨:
〜20kHz) これらの発熱は、アイドリング状態でも同様なので、必要のない時はメイン電源を切っておいた方が良い。
コンデンサー(Cm、C1、Cr)、整流器、その他は冷たい。 整流器は手持ちの100A・1.2kVを用いたが(中国製、過剰品質?)、35A程度のものでも十分と思われる。
40kHzと 低周波なので、鉄(鉄るつぼ、鉄パイプ、鉄板を巻いたもの)を介しての金属溶解(中融点〜低融点、アルミなど)には適している。 一方、黒鉛るつぼの温まり方は
ZVS方式(前節、約85kHz)よりもかなり遅く、使用に適さないと考えられる。
その後、加熱コイルを 内φ5cm、6T、φ5mm銅パイプ (約1.4μH) に取り換えて、周波数 36〜38kHzで 加熱テストをした。 鉄パイプを切った物(φ34mm、L40mm)(by.鋼(はがね)屋)を発熱体として用いた。(さび止め剤として、ケイ酸ナトリウムと硼砂を混ぜたものを塗って焼成。)
(3) 2倍圧整流電源:
最終的には、2倍圧電源で駆動する。 ブリッジ整流器をそのまま用い、200V2200μF×2 をそれぞれ上下に入れて(さらに×2)、共振器につなげないときは 266V、 10Aの負荷をかけて 246Vくらいになって、容量としては十分である。 電流計(AC15A)は同様に、AC100Vのモニターとする。(電源スイッチを入れると、電源100Vが 15A程度に一瞬はね上がる。)
コアの巻き線は、それぞれ 8Turn とした。 Lは 2つ合わせて 2.66mH となった。
結果は、40kHzに近づけると電流値が15A以上に発散してしまうので、 f = 33kHz 程度(デューティー比 30%)にすると、 アイドリング時: 3A、 プライヤを入れて 12A 程度になる。
上記の鉄輪(φ34)に (多少削って)φ30mmL40mmの 黒鉛るつぼを挿入し、アルミニウムを溶融させると、よく溶けて 鋳造もできた。
この操作を連続して、トランス・コアはやや温まり、(電圧が高いので)配線の発熱はわずかで、IGBTは熱くなった。相変わらず、コンデンサー、整流器等は
ほとんど発熱しない。
(回路まとめ) ・・・ ゲート駆動回路は 1.(2) 使用
§ 神の国の「ゲート」:
電気エネルギーを熱に変えるのに、アホみたいに多大なエネルギーを食います。 電力制御素子としては、サイリスタ、GTO(ゲートターンオフ・サイリスタ)、MOS−FETなどがありますが、数十kHz台では IGBTが良く用いられます。 工業的には、三相220Vを用いて金属の溶解に普通に用いられている IGBTですが、わがアトリエの100V電源は20Aなので、ブレーカーが落ちないように、ひやひやしながら節約気味に調整し、もう少し効率がよくなるように(?)条件を詰めていく予定です。
エレクロトニクスの最大の特徴は、電力の増幅効果にあります。 トランジスタも、FETも、電力を増幅します。一方、IGBTは、サイリスタと同じnpnpの4層構造にMOS膜のゲートを付けたトランジスタで、非常に効率の良いスイッチング素子であり、ゲート入力電流に対する電流出力の比、すなわち「電流増幅率」は、おそらくトップクラスだと思われます。 周波数はそれほど高くありませんが、数十mAのごくわずかなゲート電流によって、直接、100Aを超えるコレクタ電流を制御します。
これはちょうど、天の御国の「ゲート」にたとえることができます。
キリストが天の御国の入り口、「門(ゲート)」であり、「狭き門」=「キリストの十字架による贖い」を通してのみ、御父のおられる天の御国に入ることができます。
「信仰」とは、聖霊の電気の良導体であり、ゲートを入ると、御国のエネルギーが流れて、わざが行なわれ、実を結びます。 一方、「不信仰」は電気の不導体です。 「舌」、すなわち、口で語る信仰告白の言葉によって、その人の人生が祝福されるか、否か、が決まります。
神は、「ことばの神」です。
「狭い門から入りなさい。 ・・・ いのちに至る門は小さく、その道は狭く、それを見出す者はまれです。」 (マタイ7:13、14)
「わたしは門です。 だれでも、わたしを通ってはいるなら、救われます。」 (ヨハネ10:9)
「わたしは道であり、真理であり、いのちです。 だれでもわたしを通らないでは、父のみもとに行くことはできません。」(ヨハネ14:6)
「なぜなら、人は、心に信じて義とされ、口で告白して救われるからです。」 (ローマ10:10)
「神の(与える)信仰を持ちなさい。」 (マルコ11:22)
「誰でもこの山に向かって、持ち上がって、海に投げ込まれよ、と言って、心の中で疑ったことがなく、信じていたなら、その人の言った通りにその人になります。
このことを通して、あなたがたに言います。 何でも祈って、求めることは、今
受け取っていると信じなさい。 そうすれば、あなたがたにあるようになるでしょう。」(マルコ11:23、24)
「それと同じく、舌は小さな器官でありながら、大きなことを誇るのです。見なさい。ごく小さな火が、大きな森を燃やすでありませんか。」(ヤコブ3:5)
「死と生は舌に支配される。 どちらかを愛して、人はその実を食べる。」 (箴言18:21)